2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧

青椒肉絲を食べに

夕日が沈もうとする夏の駅。昼から一緒にいる友人と、仕事終わりの友人と並んで、中華料理店へ。 ネオンの光が徐々に強くなる街の中で15分待ち店内に。席に着き、メニューにあれこれ言いながら、僕は青椒肉絲と白米を注文する。 「肉のないチンジャオロー…

アイラブ映画

20歳、デニムジャケットを着て初めて、一人で映画館に向かった。もう今はない映画館。小さな映画館。子供の頃、親にちょくちょく連れていってもらったり、友人とホラー映画を見に行ったことはあるが、一人で行ったことはなかった。映画という娯楽に興味がな…

遠い宝物

電車の窓の外には海が見える。海の向こうにはすぐに島があり、そこを赤い橋が繋げている。私たちを繋ぐように。私は窓際の席に座って、横は空席、前も斜め前も誰もいない。誰も私が海に向けるあこがれの瞳を知る人はいない。山の中、潮の香りなど感じない場…

休日の朝、抵抗を

平日の朝は、足に鎖を巻き付けられたように憂鬱な気分になる。祝日や休日に、友人と食事をしたり、映画館に足を運んで夢の中を歩いても、自分の知らない場所で旅人の気分になっても、平日の朝は憂鬱な気分になる。 バケツ一杯の水を、顔に浴びたように。 食…

讃岐うどんを食べに

友人と香川県に讃岐うどんを食べに。暑い中、リンゴジュースや炭酸飲料で喉を潤し、たどり着いた先のうどんは絶品でした。道中、瀬戸大橋から見える海も良かったです☺️

短編小説 マーマレードをもう一度

夫に出会ったのは四十年前、自宅近くのバス停だ。当時の私は車がなく、あったとしてもそれは両親が仕事に使うもので、私自身のものではなかった。仕事場に行くには車で30分。自転車を漕いで行く気にはなれなかったので、バスを使うことにした。そんな生活を…

短編小説  ホットミルク

寒い風が私に当たってくる。すれ違う人のようには避けず、遠慮も配慮も礼儀もなく、私に当たってくる。ビルの谷間だから余計に風が強い。迷子になった風がみんな、一斉に出口を探して移動しているのだろう。「缶コーヒーでも飲もうかな」 夜がやってきた、闇…

短編小説  夜の煙に誘われて

革靴をカッカッ!と鳴らしてみる。誰もいない部屋。反響した靴音がギィギィと耳障り。床は木で出来ていて、大理石のような心地よい靴音は鳴らさない。いや、この木が上等なものなら楽しいサウンドを響かせたのかもしれない。ろくに手入れもされず、何年経っ…

日曜日、神戸へ

日曜日の朝、電車に乗って神戸へ。乗車前に本を一冊買い、神戸に辿り着くまで読書。毎日毎日、車で通勤しているので、電車の中で揺れながら読書できたらいいのにと思うけど、いざ自分が毎日毎日、電車で通勤したらそんな風には思わないんでしょ。憧れという…