2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧

短編小説  銀色の世界で自を知る

雨が降れば音が鳴る。しかし、雪は違う。気配もなく、気づいた頃には降っている。 会社を出て、夜空を見上げていると白い結晶がゆっくりと降ってきた。雨ならきっと気づいただろう。自分の座る椅子から窓の外を見て。 「雪か」 今起こっている現象を確かめる…

今日は海に

今日は友人と海に。 と言っても、寒中水泳ではなく旬の牡蠣を買いに。 夏になったら、海で泳ぎたい。できれば、サングラスをかけてトップガンごっこをしたいもんですね。

短編小説 星間旅行

「太陽系の星ならどこに旅行したらいい?」金曜日の夜、仕事から解放されたみんなが、普段は隠し持っている背中の翼を広げで賑わう繁華街。その片隅にある、どこの街にもありそうな居酒屋で、目の前の席に座るカノジョはそう聞いてきた。「旅行も何も行けな…

苦手なものも知れば好きになる、と言うお話

先日の土曜日、なんとなく暇になった午後。前々から友達に勧められていた、ジョジョの奇妙な冒険、のアニメを初めて見たんです。第一部のアニメが2012年。僕が高校二年生、毎日道着を着て汗をかき、好きな女の子にヤキモキしていた頃なんですが、その時は名…

短編小説  私はトーストを食べる

朝、六時に起きて、トーストを食べる。 フライパンで作った目玉焼きと、焼いたソーセージをパンの上に乗せ、トーストを折る。目玉焼きとソーセージを挟むように。 トーストにはマーガリン、バター、チーズなどをのせる人が多いかもしれないが、私はこれが好…

挨拶は大事、というお話

挨拶は大事、と子供の頃、よく親に言われました。中学、高校に上がると部活の先生からもよく言われました。特に高校の先生……自分の所属していた部活は剣道部だったので、なおさらに。 正直、鬱陶しいという気持ちはありました。挨拶するのは恥ずかしいし、挨…

東京一人旅

一人旅が好きだ。誰にも干渉されずに、ただ当てもなくぶらつく。歩いた先に美味そうな店があれば意気揚々……若干の臆病さを抱えながら店に入る。当たり外れはある。グルメマップなんか見ないし、評判も知らない。ただただ自分の直感を信じて入るのだ。 観光名…

街散歩

駅を出て北に向かえば喧騒が消えた。 同じ街なのに、北の坂を上げれば風の音と鳥の囀りがよく聴こえ、車の音は遠く遠く耳を掠めるくらいだ。まるで時の流れが止まったような気持ちになるけれど、長い長い坂道は綺麗に塗装されており、道中にあった大学には高…