時は戻らず、だけど止まらず

 冬休み初日。いつもより遅くに起きてリビングに行くと、姉がドラマを見ていた。内容は、30代の女性が記憶を持って死んで、2週目3週目の人生を徳を積むために走り回るお話。凶悪なテロ事件とか世界を救うために宇宙人と闘うお話ではなく、身近にいる人の不倫を防止したり、避けられるはずだった早死にを回避したり、嫌いな人でも家族がいるので嫌々ながらも助けるお話。主人公の女性が友達と集まって話したり、カラオケで愚痴ったり騒いだりする光景はよく見た、僕らの日常と変わりない。人生を繰り返しても、人の性はそうそう変わらない。一見地味だけど、僕と姉の口角は上がっていた。作られたものでもなく、ごく自然に。

 人生のやり直しはできない。

 あの日の中華屋でチャーハンを頼めばよかったとか、酒の飲みすぎて帰りのバスで歌ってしまったとか……あの日沈みゆく太陽が見守る中、告白した女性にもっとうまいことを言えたなら、僕には今頃子供がいたかもしれない。先に逝ってしまった友人ともう少し話をすればよかったかもしれない。

 後悔はたくさんある。だけど、デジタルという魔法が溢れたこの世界。そんな世界に住む僕らのありふれた感情を無視して、時は前へ前へと進んでいく。

 時と言う概念は人が作り出した鎖だと思うけど、その鎖がなければ僕らはきっと無感情だろう。

 時があるからこそ、今朝見たドラマが面白く、どこか愛しく感じるだろうな。

 時は戻せない。止まらず前に前に。

 後悔はこれからもたくさん増えていくけど、喜びもある。

 新しいゲーム、映画、ドラマに漫画、そして音楽。

 それが待っていると思うと、前に前に行くのも決して悪いもんじゃない。